「種山ヶ原 七首」
白雲のはせ來るときは
この原の
草穂ひとしく茎たわむなれ
〔現代語訳〕白雲が飛んで来る時は、この種山ヶ原の草穂は、皆、茎もしなやかに曲がるのです。
〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の六十三首目の「597歌」。「種山ヶ原 七首」の冒頭歌。「歌稿〔A〕」では、第二句は「(はせ)行く」、第三句は「丈たかき」、第四句は「(草穂)しづかに」、結句は「たわみつゝ」であったから、すべての句に推敲(すいこう)がなされたわけであるし、「歌稿〔B〕」においても、第三句は「高原」であった。「賢治が熱愛し、よく訪れた山地」であり、「生命体としての宇宙との生動する交感の場……賢治自身の心象」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕であった「種山ヶ原」関連の冒頭歌らしい気の入れようである。推敲過程を見ても、第二句の「行く↓來る」の推敲は視点の転換であるし、第四句の「しづかに」の有無も作品全体の印象を変えるもの。
(岩手大学特任教授)
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