オーパルの
雲につゝまれ
秋草とわれとはぬるゝ
種山ヶ原。
〔現代語訳〕オパール(蛋白石)のような雲に包まれて、秋草と私は濡れている種山ヶ原なのです。
〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の六十四首目の「598歌」で、「種山ヶ原 七首」の二首目。「歌稿〔A〕」では、初句は「Opalの草に」であった。「オーパル(オパール・蛋白石)」は、賢治好みの宝石で、童話「貝の火」の中心素材。詩「東岩手火山」にも、「柔らかな雲の波だ……/その質は/蛋白石」、「オーパルの雲」とある。「大気に宇宙生命のいぶきを感じる賢治にとって、種山ヶ原は浄福の天上に、より近い高原であると同時に、ダイナミックに急変する天候、風や雲の変幻自在な一大空間」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕だが、抽出歌は「浄福の天上に、より近い高原」の側面。第三・四句の「われと秋草」ならぬ「秋草とわれ」にもその一端は示されている。
(岩手大学特任教授)
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