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黒つちの
しめりのなかにゆらぎつつ
かなしく晴るゝ山の群青。
〔現代語訳〕黒土の湿りの中(の水たまり)に揺らぎながら、悲しく晴れている山の群青よ。
〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の七十八首目の「611歌」。「歌稿〔A〕」では「黒つちの」の「の」は挿入。「群青(ぐんじょう)」は、「瑠璃(ラピスラズリ)や、その主成分、藍銅鉱を原料とした高価な顔料。……深く落ちつきのある紺青色。賢治は、夕焼けの黄色の空と対照的に、山脈の青黒さに好んで群青を用いる。……青色系の例にもれず、寂しさとも結びついた色彩。」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。抽出歌では、夕方の情景であるという確証はない。ところで、短歌では、主語を示さないことも少なくないから、「ゆらぎつつ」の主体を明示されていない「われ」とし、その「われ」が視線を遠くに転ずると、そこに「山の群青」があったとする解釈もあろう。
(岩手大学特任教授)
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