2007年 5月 3日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉741 望月善次 きれぎれに雨を伴う

 きれぎれに雨をともなふ西風に
  うす月みちて
  虫のなくなり。
 
  〔現代語訳〕途切れそうに雨を連れ立っている西風に、ほのかな光の月がいっぱいに照り、虫が鳴いています。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の八十首めの「613歌」。「歌稿〔A〕」では、初句は「きれ〓〓に」、第二・三句は「(雨を)ともなひ吹く風に」。初句から第三句への「きれぎれに雨をともなふ西風」は、通常なら「きれぎれな雨」となるところを「雨」から「西風」に移して(ずらして)、「結合比喩(ゆ)」としている。また、第三句の「うす月」が「みちる」対象は「西風」になっているが、これも通常は「風」ではなく「雨」であろうから、「西風にVSみちて」も「結合比喩」となっている。このように「ずらした表現」を行う(結合比喩化する)のは、賢治作品の基盤をなす方法で、短歌的に言えば、一見何でもないような抽出歌にもこの特徴は良く出ていることになる。
  (岩手大学特任教授)

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