開拓時代のアメリカを舞台にした、ひとりの農夫のものがたりです。
愛情を注いで育てたたくさんのウシ、ブタ、ニワトリたち。そして仲良く働きものの三人の息子たち。農場には歌声があふれ、一家は幸福に暮らしてきました。ところが好事魔多し、干魃(かんばつ)が地域を襲い、蓄えも底をついて窮した農夫は、手塩に掛けた動物たちを手放し、ついには農場をも手放すことになります。そして、ふたたび土地が潤っても、農場の再興はままなりませんでした。
…忘れていた歌声をふとしたことから取り戻したとき、家族に、ゆっくりゆっくりと転機が巡ってきます。自身の夢を取り戻した農夫は息子たちをそれぞれの夢に向かって送り出し、ひとり、今や生き甲斐(がい)となった庭仕事に没頭するのでした。そして、ある日。
夢を失わずに生きること、たとえ失意に沈む日が続こうとも、家族の絆(きずな)と、心の奥底のささやかな火種で、幸福は形を変えて訪れることだってあるかもしれない。逆らわず、恨むことなく時を送った老人の半生に、静かな感動が呼び起こされます。
【今週の絵本】『おとうさんの庭』P・フライシュマン/文、B・イバトゥリーン/絵、藤本朝巳/訳、岩波書店/刊、1785円(税込)7歳〜(2003年) |