2007年 5月 4日 (金) 

       

■ 〈賢治の歌〉742 望月善次 月明かり風は雨を伴えど

 つきあかり
  風は雨をもともなへど
  今宵は虫のなきやまぬなり。
 
  〔現代語訳〕月光のもと、風は雨さえも連れていますが、今宵は虫が鳴き止まないのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の八十一首目の「614歌」。「歌稿〔A〕」から行変え、句点以外の変更はない。「ともなふ」は、「トモは伴・友。ナヒはアキナヒ・ツミナヒなどのナヒ。主と従とが友のように同行する意」〔『岩波古語辞典』〕。従って、「風は雨をもともなへど」は、(軽度の)結合比喩(ゆ)(擬人法)。「本草学で、人類・獣類・鳥類・魚介以外の小動物の総称。」だと言う「虫」には「その鳴き声を愛して聞く昆虫」の意味もあり、秋の季語ともなっている〔いずれも『広辞苑』〕から、秋における虫の「鳴き声」への注目は、一般的でもある。ただし、抽出歌が言うように、風雨の月光のもとでの、虫の鳴く確率の実態は、評者の手に余るところ。
(岩手大学教授)

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