かしはゞら
雲垂れこめて
かみなりのとどろくうちに
峯は雪つむ。
〔現代語訳〕柏の原には雲が垂れ込めて、雷が轟(とどろ)く間に、山頂には雪が積もっています。
〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の八十三首目の「616歌」。「歌稿〔A〕」では「とどろくうちに峯は雪つむ」から「とどろくうちを峯につむ雪」への書き入れもある。第二句の「雲垂れこめて」、第三・四句の「かみなりのとどろく」、結句の「峯は雪つむ」の三者の時間関係は必ずしも明白ではない。「雲」と「雷」とは同一時間も考えられるが、少なくともそれ等と「雪つむ」は同一の時間ではあるまい。その時間差を、第四句の「(とどろく)うちに」がさりげなく表しているのである。『新校本宮澤賢治全集」は、以下三首は、初期短編「柳沢」の関連作品だとしているが、他にも「522歌」や弟清六の「麓の若駒たち」(一九六二)との交響も考えねばなるまい。
(岩手大学特任教授)
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