2007年 5月 12日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉748 明けそむる空はやさしき

 〔あけそむるそらはやさしきるりな
  れどわが身はけふも熱鳴りやまず〕
 
  〔現代語訳〕明け始めた空は繊細な心をもった瑠璃=るり(色)をしているのですけれども、私の身体は、今日も熱が鳴り止まないのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔A〕」〕百三首中の七十八首目の「620歌」。「やさしき」については、「ヤセ(痩)と同根。(人の見る目が気にかって)身もやせ細る思いがする意。転じて遠慮がちに、つつましく気をつかう意。」という『岩波古語辞典』の解釈を生かした「現代語訳」にしておいた。「るり(瑠璃)」は、梵語(ぼんご)からの音転写から来た語。藍(あい)色がかった青色不透明な宝石で、仏教で言う「七宝」の一つ。賢治は「夜明け後の晴れ上がった空の新鮮さ」に対して使用すると言う〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。一首の構造的には、この「るり(瑠璃)」が大きなプラス評価であることが前提となる必要がある。その前提のもとに、自身の身体へのマイナス評価が描出されることになる。
(岩手大学特任教授)

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