2007年 6月 9日 (土) 

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉59 女神山(めがみさん、955メートル)

     
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  『林道の雪は全部消えた。もう、下前川の上流まで入っていける』6月になるといつだって、わたしは女神の誘惑に勝てない。ことしもまた、逃したくない女神山の季節がやってきた。

  西和賀町沢内と秋田県千畑の境界に位置する女神山は、真昼山地の南部にそびえるブナの森だ。若葉が光風とたわむれるほんのわずか、木々は芳しい季(とき)を足早にかけぬける。

  県道1号線沿いの山を計画する山好きなら、沢内の高下岳・和賀岳・真昼岳・女神山あたりをおよそ連想する。その山々の中でも、このところの一番人気は、ブナと滝がセットで楽しめる女神山だという。

  なんといってもブナ林の規模が広大だし、芽吹きから紅葉にかけて、ブナはカラーチャートのようにつぎつぎ色彩を変えていく。それに、いく条もの滝で個性豊な渓谷が楽しめる。また、登山がさほどハードでなく、二つのコースを回って同じ出発地点に戻れることなど、地形の特性も人気を高める理由であろう。きょうのメンバーは4人、クマの生息エリアに入るにあたり心強い。

  沢内の山伏トンネルを抜け、いっきに大野まで南下する。看板「湯田温泉郷」を右折し、県道12号線(花巻・大曲線)を白糸の滝方面へ5キロメートル西進。案内板のあるY字路で右の砂利道に入ったら、下前川に沿って最終地点まで進む。早朝で時間は短縮され、盛岡から1時間30分で登山口に着いた。

  歩きだしてすぐ「白糸の滝」に対面できる。滝壷(つぼ)まで10分で下りられるが、ここは先へ進むとして、トラバースぎみに小さな沢を越し、山ひだを回りこむ。登山口から10分ほどで、右斜面に取り付きがあるので見逃さないように歩くこと。万が一、そのまま取り付きを過ぎてしまっても、女神霊泉から戻ればよい。

  急な登りが1時間続く。高度を上げるほどにブナの若葉は眼下へ広がり、いかにもミドリ色のプールを踏んづけて登っているようだ。

  2時間で三等三角点が設置された山頂に立った。北東の真昼岳、遠くに焼石連峰。いまだ雪をまとった鳥海山は、北西のかなたに格調高く浮いていた。

  帰路はブナ見平を経由し、降る滝・岩清水・女神霊泉・爺滝・姥滝へと寄り道していたら、全行程で7時間かかった。一般的には5時間程度で回れるだろうが、日の長いシーズンゆえ、ゆっくり味わいたい女神山である。

  「ミドリの空気!」「動いているのは葉ッパだけ!」志穂さんは深く感動しているようだった。わたしは思う−−女神は、光るミドリのスカートじゃないか…と。

  (盛岡市在住、版画家)

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