2007年 6月 12日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉778 望月善次 雨やめどかえって空は

 雨やめど
  かへって空は重りして
  青木も陰の見えそめにけり。
 
  〔現代語訳〕雨は止んだのですけれど、却(かえ)って空(の感じ)は重い感じになって、青木にも陰が見え始めました。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の四首の「649歌」で「薄明の青木」六首の四首目でもある。「かえって」(促音の「っ」は小文字の「っ」)と「見えそめにけり」は、「歌稿〔A〕」では、それぞれ「却って」、「見え初めにけり」の漢字表記となっていた。但(ただ)し、「却って」の旁(つくり)は、誤って「おおざと」となっていた。「雨が止んだ」しかし、「空は却って重い感じ」となり、「青木の陰」も見え始めたという点に着目している話者は、「賢治の話者」らしいと言えば、「賢治の話者」らしいのだが、「それがどうした」とも言われそうな平凡な描写であることも事実。賢治短歌を巡る評価の否定的評価は、こうしたところからも生まれるのであろうことを示す作品でもある。
  (岩手大学特任教授)

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