2007年 6月 13日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉779 望月善次 雨ゆえに停りありけん

 あめ故に
  停りありけん 青すずめ
  青木をはなれ
  夕空を截る。
 
  〔現代語訳〕雨のために留まっていたのでしょうか。青い雀(すずめ)はアオキを離れて夕べの空をズハリと切るのです。
  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の五首目の「650歌」で「薄明の青木」六首の五首目でもある。「歌稿〔A〕」では、「青すずめ」の部分に「その(すずめ)」を書き抹消している。雨宿りをしていた(と話者が想像した)青い雀が、アオキから飛び立って、夕べの空を切断する光景を作品化したもの。「せともののひびわれのごとくほそえだは/さびしく白きそらをわからぬ。」〔28歌〕等に見るように、或(あ)るものが空を切断するイメージは賢治らしいものの一つ。なお、「截(き)る」の「截」は解字的には、「小さい雀」と「戈」とから成り立つ漢字で、賢治がこの漢字を用いたことにそうした意識があったかは明らかではないが、「雀」に関連した文字であることは興味深い。
  (岩手大学教授)

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