2007年 6月 14日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉780 望月善次 今ははや、たそが空と

 いまははや
  たそがぞらとなりにけり
  青木のかなた
  からす飛びつつ。
 
  〔現代語訳〕今は早くも、黄昏(たそがれ)の空となってしまいました。アオキの向こうにカラスが飛びながら。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の六首目の「651歌」で「薄明の青木」六首の最終歌でもある。「歌稿〔A〕」においては、「今ははや」(初句)、「たそがれ空」(第二句)、「飛びつゝ」(結句)と表記の違いはあった。抽出歌の第四句には、「(かなた)に」「せな(に)」の書き入れもあったが、いずれも抹消されている。既に見てきたように「薄明の青木」六首は、黄昏のアオキを巡る様子を作品化したもの。アオキに雨が真っすぐに降っているところ(648歌)から始まり、雨後に至り(649歌)、雨を避ける羽虫(648歌)や避けていた青スズメ(650歌)などを経て抽出歌に至り、アオキの彼方にカラスを置く。素朴ながらも構成力をも感じさせる一連。
(岩手大学特任教授)

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