「公園。」
青黝み 流るゝ雲の淵に立ちて
ぶなの木/薄明の六月に入る。
〔現代語訳〕青黒く流れている雲が淀(よど)んでいるところ(を背景にして)立ちながら、ブナの木は、六月の暮れ方に入るのです。
〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の七首目の「652歌」で、「公園」と題された一連で(書き入れ歌も含めて)関係歌が七首並ぶ。「岩手公園」〔文語詩稿 一百篇〕の関連歌でもある。「歌稿〔A〕」においては、題名は、「公園の薄明」。この作品においても、初句に「うちくらみ」(後に抹消)、「青みわび」があり、結句にかけて「六月に入る薄明のぶな」があった。初句が掛かるのは第二句か結句か、および「立ち」の主体は、ブナで良いのかをめぐって、厳密には特定し難い部分も残すが、「現代語訳」では、初句は第二句に掛かり、「立ち」の主体はブナとした。達意の点では「六月に入る薄明のぶな」だろうが、これでは物足りない作者は、抽出歌へ推敲(すいこう)したのである。
(岩手大学特任教授)
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