霧積みて
雫も滋くなりしかば
青くらがりを立てるやまどり。
〔現代語訳〕霧も積もって、雫も沢山(たくさん)になったので、青いくらがりを立っています、ヤマドリが。
〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十一首目の「666歌」で「北の又」と題された一首。「歌稿〔A〕」から、行変え、句点以外の変更はない。「ヤマドリ」は、「キジ科の鳥。翼長21〜22センチ・雄の尾はひじょうに長い。頸部、背面は普通、赤銅色……くさむらのくぼみ等に営巣。」するのだという〔『マイペディア』〕初句から第三句にかけての「霧積みて/雫も滋くなりしかば」は、話者が見たそのままの描写だとも受け取れるが、「雫も滋く」なったことの原因を「霧積みて」とする「積みて」の表現になるほどと納得させられた。おそらく「早朝」の様子であり、その時刻は「薄明」として賢治の最も好きな時間であるが、「青くらがり」という表現もなかなかにいい。
(岩手大学特任教授)
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