2007年 7月 3日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉799 望月善次 星空は、しずにめぐるを

 ほしぞらは
  しづにめぐるを
  わがこゝろ
  あやしきものにかこまれて立つ。
 
  〔現代語訳〕星空は静かに廻(まわ)っておりますのに、私の心は怪しいものに囲まれて立っています。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十二首目の「668歌」で「葛丸」と題された一首。「歌稿〔A〕」では、第二句、結句の表記が、それぞれ「静(シヅ)に」、「圍(かこ)まれて」であった。「葛丸」は、賢治作品の読者には、北上川の支流「葛丸川」としてもお馴染(なじ)みの場所。童話「楢ノ木大学士の野宿」の舞台であり、土性調査は『岩手県稗貫郡地質及土性調査報告書』(稗貫郡役所、一九二二)に纏(まと)められていることも良く知られている。伝記的の賢治の原体験にも、作品面での「楢ノ木大学士」の体験にも重なるような一首。周囲の状況描写や話者の感情がストレートに表され過ぎているという見解もあろうが、その明瞭(りょう)さが、葛丸ダム脇の歌碑設立ともなっているのは事実。

  (岩手大学特任教授)

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