今から20年以上も前のことですが、東京・新宿で、ある出版社主催の天文関係の催し物があり、そこで知り合ったプラネタリウムメーカーである五藤光学研究所の方からこう言われました。
「今度盛岡にうちの製品が入ることになりました。ただ、大型望遠鏡はいらないからと盛岡市から言われたんです。プラネタリウムとセットで組み込むことで経費的に相当有利ですし、もともと必要なものとして全国の施設の多くが一緒に備え付けるんですが、なぜか盛岡さんは実際に見る設備は必要ないとおっしゃいます。わたしたちプラネタリウムメーカーは実はそこのところを一番気に掛けているんです。本物の星を見せることと両者がそろって初めてプラネタリウムの真価が発揮されるものですから。盛岡の教育関係者の方々はほかとは違うポリシーを何かお持ちなんでしょうか?」
わたしは会って間もないうちからいきなりのこのような、しかも真剣な問いかけに、何とも答えようがありませんでした。きっとよほど気になっていたのでしょう。
当時、盛岡を離れて暮らしていたわたしにとって、盛岡にプラネタリウムが設置されることを知ったのはそのときが初めてでしたし、盛岡がほかとどう違う教育方針なのか部外者の身に分かるはずもありません。しっかりとしたコンセプトを持つメーカーである五藤光学の人たちです。今でも疑問に思っているに違いありません。
しかし誰よりもそのことをもっと大切な問題ととらえているのは歴代の現場担当の先生方ではないでしょうか。プラネタリウムを担当する先生方は教員の人事異動によって数年ごとに交代します。
ある年のことでした。担当の先生に、「うちの施設にも本物の天体を見せる大型の望遠鏡がなければならないというのは前々からわかっていたことですが、わたしたちがお願いしても予算がないの一言で片付けられてしまいます。皆さん方のような市民の天文ボランティアの団体が市に働きかけてくれるのが実現への一番の早道ではないかと思うのですが…」。こういった話を持ちかけられました。
(盛岡天文同好会会員) |