今週は徹頭徹尾手描き、虫たちが演じる絵物語とまいりましょう。
春爛漫(らんまん)、桜の花の満開の下、季節はずれはこの際ご容赦いただくとして、大路小路を行き交うは、時代の装束身に纏(まと)い、物売り駕籠(かご)かき飛脚人足、忙しく立ち働く者、舟遊びに興じる者などなど、大小、とりどりの虫たちであります。時は文化か文政か、作中語られてこそありませんが、これはもう、まごうかたなき江戸の町。これを舞台に痛快捕物の一幕が切って落とされる。…さて目の配り足の運びに油断なく、町をゆくのは、ちょいとコワモテ、そして腕利きの岡っ引き、オニグモのあみぞう親分だ。そこへ持ち込まれたのが、菓子の大店を狙う怪盗からの予告状。お上から預かった十手に懸けて、不敵な盗賊の挑戦を受けて立つ親分、さて勝算は、ありや、なしや。…
作者はひたすら昆虫を描き続ける、実は漫画家。丁寧な描きこみ、巧みな擬人化と行き届いた考証の時代風俗がマッチ。歯切れの良い江戸言葉に畳み掛けられてお目々ぱちくりのこどもたちもやがて喝さい、時代劇ファンも見逃せない、現代の戯作絵巻物です。
【今週の絵本】『くものすおやぶん とりものちょう』秋山あゆ子/作、福音館書店/刊、840円(税込)4歳〜(2005年) |