2007年 7月 6日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉802 望月善次 ああ大地かくよこしまの

 〔あゝ大地かくよこしまの群を載せ
  かなしみいかにはげしかるらん。〕
 
  〔現代語訳〕あゝ大地よ。このような邪悪な群を載せて、悲しみの度合いは、どんなに激しいものでしょうか。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の二十六首目の「671歌」で、「折壁」と題されたものの中の一首でもある。一首の内容は、具体性はやや不足していて、理念的でさえあり、作品の出来具合からすると物足りない点もある。しかし、同時にこうした理念的な一首は、逆に、何か背後に重大な体験がある場合も少なくないことにも留意しておく必要があろう。伝記作者であれば、「折壁」から帰花直後の、保坂嘉内宛書簡〔書簡88〕の「最早林業にても農業にても小生に小生の家庭(父母)が希望する職業に於て小生の家に対する本務を尽し度き考に有之候。但今後の繋累は断じて作らざる決心に御座候。」等との関連に及ぶ人もいるのではとの勝手な想像もしてしまったのである。

  (岩手大学特任教授)

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