2007年 7月 8日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉804 望月善次 縮まれる肺いっぱいに

 縮まれる肺いっぱいに
  いきすれば
  空にさびしき雲もうかべり
 
  〔現代語訳〕小さくなった肺一杯に、呼吸をすると空に寂しい雲も浮かんでいます。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十五首目の「673歌」。「歌稿〔A〕」には、第三句に「いき吸へば」の書き加えもある。また「歌稿〔B〕」では、初句には「つかれたる」(後に抹消)や、結句には、「雲うかび立つ」「うかびけり」「うかべり」等の形があり、なかなか定まり難かった経過が仄(ほの)見える。「縮まれる肺」と言えば、どうしても、六月三十日の岩手病院にての診察〔書簡77〕のことが思い出されてしまう。当時の「結核」の怖さを考えれば、賢治の言いようのない不安も容易に想像できる。結句の定まり難さは、そうした当時の健康状態などと関連するものであったかは、論者によって分かれようが、「さびしき雲」の意味するところは単純ではあるまい。
(岩手大学特任教授)


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