2007年 7月 9日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉805 望月善次 相次ぎて銀雲は

 相つぎて
  銀雲は窓をよぎれども
  ねたみは青く室に澱みぬ。
 
  〔現代語訳〕次々と、銀色の雲は窓を過ぎて行ったのですけれど、ねたみは青く室に澱(よど)んでいるのです。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十六首目の「674歌」。「歌稿〔A〕」によれば、「折壁」一連のものであることについては、再三触れているところ。また、「歌稿〔A〕」からの、行変え、句点以外の変更はない。一首全体の構造を現代語で示すと、「銀雲は……過ぎて行ったが、ねたみは……澱んでいる」という形となる。「過ぎて行ったものと、澱んでいるもの」の対比であり、重点は、もちろん、後者の「澱んでいるもの」にある。この重点を置くべき「澱んでいるもの」の状態を表すのに「ねたみは〜澱む」という結合比喩(ゆ)を用い、さらに「青く〜澱む」と二重に結合比喩を用いるのである。「青く」という賢治の典型的語彙(ごい)が、仕上げに貢献することにもなっている。

  (岩手大学特任教授)

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