2007年 7月 11日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉808 望月善次 険しくば険しき中に

 〔けはしくばけはしきなかに行じな
  んなにをおそれてたゆむこゝろぞ〕
 
  〔現代語訳〕困難であれば、困難の中で修行を励みたいと思います。何を恐れて怠ろうとする、この心なのでしょうか。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の三十一首目の「676歌」でやはり、「折壁」一連の作品の中で、抹消歌。「行ず」は、サ行変格動詞で「行く」や「する」などの意味。仏教関係では「仏道修行」の意味ともなる。抽出歌では、狭義の仏道修行ではないが、「修行」の心持ちを込めた現代語訳をつけておいた。「たゆむ(弛む・懈む)」は、「タユシ(懈)の動詞形。持続する緊張がゆるむ意」〔『岩波古語辞典』〕が原義。困難に直面すると、挫(くじ)けそうになり、修行や頑張りの心を失うのは、確かに人間に共通する心の一つ。が、(675歌でも触れたが)この抽象的理念をそのまま、短歌形式の中に作品化することは簡単ではなく、その困難さは抽出歌のものともなっている。

(岩手大学特任教授)

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