一台の自動車が車庫を出て野山をゆき、サーキットのスタートラインにつくまでを描いた幼児向けの作品(好評につきシリーズ化されています)ですが、その画面からは、作者の自動車への思いが伝わってきます。自動車が、好きで好きでたまらない、という思い。
本作も冒頭では主人公「バルンくん」(イギリスのスポーツカー「オースチン・ヒーレー・スプライト」という車種なんだそうです、マニアック!)、一台で走っているのですが、クライマックスでは何台もの実在の自動車が登場。もう描きたくて描きたくてガマンデキマセンデシタ! という感じ。ほかに絵本として発表されている作品も、どれも自動車が活躍するもので、そのすべてが精密、それでいて愛きょうたっぷりに描かれている。…たとえ幼児が相手でも、否、幼児なればこそ、キッチリ描いてみせる、プロの仕事でもあります。
それもそのはず、作者はかつて若者文化をリードした雑誌「POPEYE」の表紙イラストを長く手がけるなどした、バリバリのイラストレーター。こどものころにあこがれ続けた自動車を、今、自らの手でこどもたちに伝えたいという思いのこもった作品たちなんです。
【今週の絵本】『バルンくん』こもりまこと/作、福音館書店/刊、600円(税込)2歳〜(2003年)
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