2007年 7月 12日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉809 望月善次 険しくも空を刻める

 〔けわしくもそらをきざめる峯々に
  かゞやくはなの芽よいざひらけ〕
 
  〔現代語訳〕非常に厳しく空を切り刻んでいる、その峯々に輝く花の芽よ、さあ、今こそ開いてください。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の三十二首目の「677歌」でやはり、「折壁」一連の作品で抹消歌。初句の「けわしくも」は、「けはしくも」の誤記。初句では、「けわ」の横に「し」が加えられており、また第二句の「きざめる」は、当初「か」と書き始めて「き」と直している。「峯々が〜空を刻む」という「空」の捕え方は、「せともののひびわれのごとくほそえだは/さびしく白きそらをわかちぬ」〔「歌稿〔B〕〔B〕28歌」〕などにも通じる賢治的把握法の一つ。その「峯々」に、「かゞやくはなの芽」があり、それに対して呼びかけるというのは、これまた賢治らしい。これらの賢治らしさが、結句「芽よいざひらけ」の常識性を救っているというのが評者の見解。

  (岩手大学特任教授)

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