2007年 7月 13日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉810 望月善次 白金の月に向かえば

 しろがねの
  月にむかへば
  わがまなこ
  雲なきそらに雲をうたがふ。
 
  〔現代語訳〕白金色の月に向かいますと、(その白い光の故に)私の目は、雲が無い空に雲があるのかと疑うのです。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十七首目の「678歌」。「歌稿〔B〕」では、推敲(すいこう)はないが、「歌稿〔A〕」においては、「むかへば」は、「むかひて」と直した後、再び「むかへば」としているし、「雲なきそらに雲をうたがふ」は、「かなしき雲をうたがふ」や「かなしき雲をうたがふなりけり。」および「かなしく雲をうたがへるかな。」等もあった。「しろがね(近代まではシロカネ)」は「白金(プラチナ)」のことで、賢治は、「雨や煙」のイメージとして用いることが少なくないのだが〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕、ここでは、一般的用法。白く光る月の光の故に、雲の無い空に雲があるかと思う等の「軽い知的戯れ」は、「古今集」等が開拓した方法でもある。

(岩手大学特任教授)

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