しろがねの
月にむかへば
わがまなこ
雲なきそらに雲をうたがふ。
〔現代語訳〕白金色の月に向かいますと、(その白い光の故に)私の目は、雲が無い空に雲があるのかと疑うのです。
〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十七首目の「678歌」。「歌稿〔B〕」では、推敲(すいこう)はないが、「歌稿〔A〕」においては、「むかへば」は、「むかひて」と直した後、再び「むかへば」としているし、「雲なきそらに雲をうたがふ」は、「かなしき雲をうたがふ」や「かなしき雲をうたがふなりけり。」および「かなしく雲をうたがへるかな。」等もあった。「しろがね(近代まではシロカネ)」は「白金(プラチナ)」のことで、賢治は、「雨や煙」のイメージとして用いることが少なくないのだが〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕、ここでは、一般的用法。白く光る月の光の故に、雲の無い空に雲があるかと思う等の「軽い知的戯れ」は、「古今集」等が開拓した方法でもある。
(岩手大学特任教授) |