しろがねの月にむかへば
わがまなこ
雲なきそらに
雲をうたがふ。
〔現代語訳〕白金色の月に向かいますと、(その白い光の故に)私の目は、雲が無い空に雲があるのかと疑うのです。
〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十八首目の「678´歌」。「そら高く」と書き出して抹消した後、改行の変化以外には、内容的には「678歌」全く変わらぬ抽出歌を書いている。再度「678歌」を掲げると「しろがねの/月にむかへば/わがまなこ/雲なきそらに雲をうたがふ。」であったから、抽出歌が「初句と第二句とを連続し、第四句・結句を改行」したのに対し、「678歌」は、「初句と第二句とを改行し、第四句・結句を連続」している。評者の「短歌定型観」からすれば、(「啄木の三行短歌」を含め)、改行問題は、短歌における周辺的事項ではあるのだが、賢治が、改行の異なる作品を別個の作品として残した事実は、やはり見逃せないことではある。
(岩手大学特任教授)
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