2007年 7月 14日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉811 望月善次 白金の月に向かえば

 しろがねの月にむかへば
  わがまなこ
  雲なきそらに
  雲をうたがふ。
 
  〔現代語訳〕白金色の月に向かいますと、(その白い光の故に)私の目は、雲が無い空に雲があるのかと疑うのです。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の二十八首目の「678´歌」。「そら高く」と書き出して抹消した後、改行の変化以外には、内容的には「678歌」全く変わらぬ抽出歌を書いている。再度「678歌」を掲げると「しろがねの/月にむかへば/わがまなこ/雲なきそらに雲をうたがふ。」であったから、抽出歌が「初句と第二句とを連続し、第四句・結句を改行」したのに対し、「678歌」は、「初句と第二句とを改行し、第四句・結句を連続」している。評者の「短歌定型観」からすれば、(「啄木の三行短歌」を含め)、改行問題は、短歌における周辺的事項ではあるのだが、賢治が、改行の異なる作品を別個の作品として残した事実は、やはり見逃せないことではある。
  (岩手大学特任教授)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします