■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉61 堺ノ神岳(さかいのかみたけ、1319メートル)
|
宮古市と岩泉町の境に、標高1319メートルの「堺ノ神岳」がある。山なのに鼻筋がスッととおり実にカッコいい。お菓子のトンガリコーン型で、格別目を引く山である。
初めて見たときわたしはギョッとするほど驚いた。なにしろ区界の兜(かぶと)明神岳(1005メートル)と同じだ。岩峰ピークの荒々しさや、神々しさ、牧野がひろがる裾(すそ)野まで、なにからなにまでよく似ている。地元ではそれだけに、堺ノ神岳を「兜明神」と呼び、区界の兜明神岳とイメージを重ねて親しんでいるのだという。
しかも、東にもう一つ、宮古市新里と岩泉町にまたがる峠ノ神山(1230メートル)があって、あわせて下閉伊地方の神さま「3兄弟」だ。ダントツ高い堺ノ神岳が長男といったところだろうか。
そこでイキな山登りをひとつ。お天気はなんてったって快晴がいい。国道106号の区界道の駅で兜明神岳をしっかり見る。それから堺ノ神岳へ向かう。そして堺ノ神岳に登り、どこまでもうねるミドリの北上山地の中からまず峠ノ神山をさがす。すると誰しも、東西に並ぶ3つの明神さまを結んでみたくなる。
けれど、それだけで驚いちゃいけない。北に明神山、さらに明神岳が2ついて、上明神山や天神森もいる。地名に端神、アナにも明神穴。あっちにもこっちにも神さまだ。広辞苑には、神さまの敬称が「明神」、さらに尊称して「大明神」とあった。わたしのきままな解釈により、北上山地をここは「北神」山地と置き換えたいところだが、賛同してもらえるだろうか。
堺ノ神岳へは3つのアプローチのうち、国道106号の川内から、家々を屋号で呼ぶ夏屋コースがおすすめだ。『さあぐす』『てでえぐら』『よりこべ』『いれつっぱり』『うわっから』……な〜んて、ユニークな表示を口ずさむと面白い。
そうこうしながら八戸・川内線の緑資源林道を川井村と岩泉町の境、展望のきく標高950メートルの十字路へかけあがる。十字路を右折し、砂利道を約3キロメートル行き、へアピンカーブの広場へ駐車。すでに標高は1230メートルに達している。
まず、害鷹森(げえだかもり)へ行こう。風衝荒廃地の復旧柵のハシを北に500メートル登っていくと礫(れき)原の中に二等三角点がある。北へ牧柵沿いにふみ跡をたどれば、上松森から堺ノ神岳へ至るが、伸びたササに追い返され車にもどった。
再び車で北東へ。右から和井内放牧場の道と合流したら駐車。草原を踏み、鳥居をくぐる。さえぎるものがない堺ノ神岳の岩峰上に、祠(ほこら)と三角点があった。
おッ、明神さまのおしゃべりタイムが始まった。だって空が、やたらやかましい。
(盛岡市在住、版画家)
|
|
|
|
|
|
|