2007年 7月 16日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉813 望月善次 ああこはこれ、いづちの

 〔青びとのながれ〕
  〔あゝこはこれいづちの河のけしきぞ
  や人と死びととむれながれたり〕
 
  〔現代語訳〕ああ、これは一体何処の河の景色なのでしょうか。人と死人が一緒になって流れています。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の三十五首目の「680歌」で、「青びとのながれ」十首の冒頭歌でもある。賢治短歌の頂点をなすと言われる「青びとのながれ」であるが、まず「あゝこはこれいづちの河のけしきぞや」と、話者自身が、読者を、異なった世界へと導き入れるべき文言をはっきりと示していることを指摘したい。「青びとのながれ」の世界は、「異空間」として展開されるのである。また、今回は、冒頭作品でもあるから、「青びとのながれ」における成立時期〔「歌稿〔A〕」の清書開始は、大正八年の夏頃であり、成立は、大正九年の夏頃。〕と、何故賢治が、この作品群を「歌稿〔B〕」には収録しなかったかの二つは、重要論点であることだけを指摘したい。
(岩手大学特任教授)

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