2007年 8月 2日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉830 望月善次 暁の琥珀光れば

 あかつきの
  琥珀ひかればしらしらと
  アンデルセンの月はしづみぬ。
 
  〔現代語訳〕暁の琥珀(こはく)(のような空)が光るので、白く白くアンデルセンの月は沈んだのです。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の三十七首目の「696歌」で、「アンデルセン白鳥の歌」の八首目。嘉内宛書簡(書簡95)では、六首中五首目で、第二句は、「瑪瑙(めのう)光れば」となっている。二点に注目した。一つは、「瑪瑙」と「琥珀」の問題である。『絵のない絵本』では、「夜明けの光が、赤い雲をかがやかせました。すると、その白鳥は、力をとりもどして、空に舞いあがる」とあるように、「赤い雲」が、白鳥が再度飛び立つ契機となっているのだから、その「赤さ」を考えると、「琥珀」よりも「(紅縞)瑪瑙」の方が蓋然(がいぜん)性が高いと言えよう。もう一つは、「月」の処理である。「語り手」から「登場人物」と変化した「月」はやはり沈ませねばならないのである。

  (岩手大学特任教授)

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