あかつきの琥珀ひかれば白鳥の
こころにはかにうち勇むかな。
〔現代語訳〕暁の琥珀(色の空が)光ったので、白鳥の心は急に勇気づいたのです。
〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の三十八首目の「697歌」で、「アンデルセン白鳥の歌」の九首目。対応する嘉内宛書簡(書簡95)六首の中には含まれていない。再び『絵のない絵本』から、対応する部分を重複を厭わず引くと次のようになる。「夜明けの光が、赤い雲をかがやかせました。すると、その白鳥は、力をとりもどして、空に舞いあがると、のぼってくる朝日のほうへ、青くかすむ海岸のほうへと飛んでいきました。」白鳥が力を取り戻したのは、朝の光によっているところは、共通するが、「琥珀」をもって来たところが賢治の独創性になる。なお、『新宮澤賢治語彙辞典』も言うように、「賢治は好んで夜明けの空の描写に琥珀を使う」ことも指摘しておこう。
(岩手大学特任教授)
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