2007年 8月 8日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉836 望月善次 この炎輝きあまり

 〔このほのほかゞやきあまりしげけ
  ればかへりて水のこゝちするかな〕
 
  〔現代語訳〕この炎は、輝きがあまりにも連続して輝くので、(炎ではなく)かえって水のような気持ちがするのです。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の五十七首目の「702歌」。初句の冒頭を「ほの」と書き出して抹消した跡もある。なお、「歌稿〔A〕」についてはほとんど一行書きなのだが、抽出歌の場合、実は、「あまり」までと以後が、二行の形となっている。書かれた様子や、前後の作品から考えると、多行化の意識で二行としたというより、偶然二行になった方の可能性が高いのではと判断したので、一行の形で示すこととした。「しげけれ」は、「しげし(繁し・茂し)」で、「空間的・時間的に物事が次から次へと生起し、相互に密接してすきまのない意」〔『岩波古語辞典』〕。化学的知識があれば、このような炎を出す物質の特定も容易であろうが、これも評者に手に余るところ。

  (岩手大学特任教授)

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