2007年 8月 11日 (土) 

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉63 青松葉山(あおまつばやま、1366メートル)

     
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  岩泉町と川井村にまたがる青松葉山は、北上山地の奥山である。蓬原牧場が高所まで拓(ひら)かれているが、山頂への登山道はなくヤブ山だった。

  「ササヤブを漕(こ)ぐ」。書けばたったの7文字。ところが太いササの抵抗は生半可じゃない。身体が呑(の)みこまれると手足は思いどおりに動かせない。だから雪がササを圧する積雪期、カンジキやスキーで入るというのが定番だった。

  しかも、県道171号線・大川松草線の牧場ゲートが開く4月中旬以降、ササがおきない数日に限って、青松葉山はその神秘の頂を登山者にあけわたす。

  山頂部をおおうアオモリトドマツ群は、遠目に黒々と見える円すい状の常緑樹。盛夏、野鳥がついばむ松ぼっくりはさらに藍(あい)のまじった艶(つやや)やかな青色だ。いつも山肌が青々しているため「青松葉山」と呼ばれた。

  わたしが初めてこの頂を踏んだのも、霧が立ちこめる5月の5日のことだった。1050bの立臼峠に車を置く。牧野の東に取りつき、尾根に上がってレーダー廃屋跡を通過し、だだっ広い平坦な雪面をひたすら北東へ進む。復路を失わないよう、ときどき目印の赤布をつけた。

  1148b点からさらに北東へ。三角点の設置された場所は、盛岡ヤブ山集団の標識板をつけたアオモリトドマツの根元あたりだが、まだ固雪で覆われている。その日の記録に「残雪と深い霧、青き頂きへ2時間15分かかった」とある。
 
  ところが、聞いてびっくりわたしは驚いた。青松葉山に登山ルートができた。それも夏、これまでとは違う南斜面に、である。あの密生度のササを刈りはらったとはすごい…想像しただけでも気が遠くなりそう。

  川井村・木の博物館推進部が作製したガイドマップによれば、川井村の全フィールドを丸ごとミュージアム「木の博物館」ととらえ、憩い、科学研究、学習の場に活用するのだという。青松葉山は分館4号。森の案内人がアオモリトドマツの森へいざなう仕組みで、歩きながら巨木を観察し山の成りたちを知るなど、スケールはケタはずれに大きい。これで、青松葉山に多くの登山者が触れるチャンスがやってきたことになる。

  新ルートには、国道106号大滝トンネルと大滝橋の直前で左折し、700b先のY字路を左、達曽部牧場(川内)への道をいく。国道からちょうど10`b地点の右手に川井村の構想を記した案内板があり、木の博物館への問い合わせを待っている。

  あのとき雪に埋もれ掘り当てられなかった三角点は、二等であった。青松葉山は厚いベールを脱いだ。わたしの密やかな感慨がたちどころに変容した。

(盛岡市在住、版画家)

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