2007年 8月 12日 (日) 

       

■  〈賢治の歌〉840 望月善次 うちくらみ閉ざすみ空を

 〔うちくらみとざすみそらをかなし
  めば大和尚らのこゝろ降り下る〕
 
  〔現代語訳〕暗くなって閉ざすような空を悲しく思うと、大和尚達の心が降り下るのです。

  〔評釈〕「大正七年五月」〔「歌稿〔A〕」〕六十五首中の六十一首目の「706歌」。「うちくらみにごれるそらをながむれば大和尚らのこゝろふりくる」の形だったから、第二句の「にごれる」、第三句の「ながむれば」、結句の「ふりくる」が変化している。(なお、結句は、当初「落」と書き出して「降り下る」と推敲(すいこう)している)「大和尚」は、「法印大和尚位の略」という意味と「高徳の和尚」の意味とがあるという〔『広辞苑』〕。「和尚」は、天台宗の「カショウ」、真言宗等の「ワジョウ」の訓(よ)みもあるから、ここでは、特定の「大和尚」像を描いての作品だとも言える。いずれにしても、「大和尚らのこゝろ」の降下を「作品」として自立させるためには、もう一踏み込んだ具体化が必要か。

(岩手大学特任教授)

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