2007年 8月 15日 (水) 

       

■ 〈賢治の歌〉842 望月善次 み空よりちさく冷たき

 みそらより
  ちさくつめたき渦降りて
  桐の梢に
  わななくからす。
 
  〔現代語訳〕(視線を上に置くと、仰ぐべき)空から小さく冷たい渦が降りて来て、(その降りて来た渦に従って、視線を段々下に下ろすと)桐(きり)の梢(こずえ)に、小さく震えているカラスがいます。

  〔評釈〕「大正七年五月より」〔「歌稿〔B〕」〕五十首中の四十三首眼の「708歌」。第二句は「(ちさく)ちいさき」の形もあった。「ちさくちいさき」は、話者の関心の中心が「小ささ」にあることが明確であるが、推敲(すいこう)後の「ちさくつめたき」となると、「小ささ」に「冷たさ」の要素が加わることになり、結句の「わななく」との整合性が高まることになる。初句「みそら(御空)」は、の「み」は美称であるが、ここでは、語調を整える役割も果している。「わななく・わななき」は、「擬態語ワナワナに接尾語キのついた形」で、体などが小刻みに震えること〔『岩波古語辞典』〕。注目すべきは、上の空から、より下の梢へと、降りて来る(が、依然として上向き)「話者の視線」だと見た。

(岩手大学特任教授)

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