ほしめぐる
みなみのそらにうかび立ち
わがすなほなる
電信ばしら。
〔現代語訳〕星が廻(めぐ)っている南の空に浮かび立った、私の「素直な電信ばしら」よ。
〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の九首目の「718歌」。「歌稿〔A〕」では、初句「ほしめぐる」を「蠍(さそり)行く」と書き直している。(蠍の「虫偏」を「火偏」に誤り書き直している)蠍座は「賢治が最も好んだ星座。夏の夕方、南天に低くS字形に輝く」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕だから、抽出歌の内容とも一致する。従って「ほしめぐる」における話者の関心の中心には、蠍座があったと考えてよいだろう。「電信柱」は、電線を支える碍子(がいし)を建物の石の壁や地下敷設ができなかった日本では、都市でも電信柱が林立し、日本特有の都市風景であったという〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。この電信柱に「わがすなほなる」を付ければ、賢治トッテオキ表現」となる。
(岩手大学特任教授)
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