2007年 9月 4日 (火) 

       

■  ライオンの糞で「列車事故」防止 シカの忌避剤を開発

 JR東日本盛岡支社と岩手大学と盛岡市動物公園は共同研究で、ライオンの糞(ふん)を原料にしたシカを追い払う忌避剤を開発した。県内のJRのローカル線ではシカが列車に衝突して運行障害が出ており、駆除に頭を痛めていた。3者は04年から「ライオンプロジェクト」を立ち上げ、動物公園で採取したライオンの糞の加工に取り組んだ。線路に散布すると、シカは天敵の猛獣から放たれる異臭を避けて遠のき、JR釜石線の実験区間で事故が減少する効果を確認した。既に特許を申請しており、今後は製品化を目指している。

     
  釜石線でのライオンの糞の散布実験  
 
釜石線でのライオンの糞の散布実験
 
  県内ではシカが列車に衝突する事故が年間100件ほど発生し、その半数で運行障害が出ている。最も被害が多いのは釜石線で、山間部を走る山田線や大船渡線、東北本線の一部でも発生している。これまで鈴、超音波、風車を使ってシカを追い払う実験をしたが、効果が見られなかった。03年にJR西日本が、シカはライオンの糞を嫌がるというデータを発表したことから、盛岡支社が開発に取り組んだ。

  04年6月には岩手大学でライオンの糞による化学分析をスタートさせ、農学部の動物医科学系と環境科学系のチームが精製を研究した。

  同学部の松原和衛准教授は「大学で科学的に研究するのは初めてと思う。ライオンの糞から忌避行動を起こさせるものを抽出して実験したが、何が忌避させるのかまだ分からない部分がある。シカにとって変なにおいの、そこに行くのは許されないと感じて寄りつかせないものがあるのだろう」と話す。

  これまでの研究で脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、コレステロール還元化合物などに忌避効果があることが分かり、さらに研究の余地を残している。05年秋にはライオンの糞を液に溶かして試験的に釜石線に散布したが、臭気が強すぎて人手の取り扱いが大変なことが分かった。このため粉末化して散布できるよう改良を進めた。

  同支社は06年に釜石線の上有住〜洞泉間で散布実験したところ、1年前20件あったシカの事故が3件に減少し、現場での効果を確認した。今年度は8月20日に上有住〜松倉間で散布実験し、効果を確かめている。

  同支社総務課の山崎嘉一広報担当は「今後は製品化を考えているが、3年くらいかかるのではないか。ライオンは盛岡に2頭、秋田に2頭いるだけで、糞は年間1キロほどしか確保できないので、そこをクリアしなければならない」と話す。動物園からの原料確保が課題という。

  実験結果は6日から9日まで盛岡市で行われる日本野生動物医学会で発表される。

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