2007年 9月 6日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉864 望月善次 北上川そらぞらしくも

 北上川
  そらぞらしくもながれ行くを
  みをつくしらは
  夢の兵隊。
 
  〔現代語訳〕北上川が、何も知らないかのようにとぼけて流れて行くのに対して、澪標(みおつくし)たちは、夢の中の兵隊のように並んでいます。

  〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の十四首目の「721歌」。「歌稿〔A〕」は、内容的な変化はないが、結句のみが行変えとなっていた。「そらぞらし」にピタリとした訳をつけられないのは「717歌」でも断った通りであるが、一応は、無関心な様子だとして、何も知らぬように流れる北上川と「みをつくし(澪標)」とを対比させている作品だと読んだ。評者には、北上川の「みをつくし」がどんなものであったかの知識はないが、並んでいて本来は動かないものを、軍隊や兵隊と関連づけるところは「月夜のでんしんばしら」にも通じると想像を広げてしまった。そういえば、「月夜のでんしんばしら」も、恭一に「まるで川の水のやうに、次から次とやって来」たのであった。

  (岩手大学特任教授)

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