2007年 9月 12日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉869 望月善次 すみやかに鶏頭山の赤空を

 すみやかに
  鶏頭山の赤ぞらを
  くもよぎり行きて
  夜はあけにけり。
 
  〔現代語訳〕素早く、鶏頭山の(上の)赤い空を雲が過ぎて行って、夜は明けたのです。

  〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の十八首目の「726歌」。「夜をこめて行く歌」の四首め。「歌稿〔A〕」では、第四句の「くも」は「雲」。「すみやか」には「速やか」と「澄やか」の二つの系統があり、抽出歌においては、そのいずれにおいても、一応の意味は通るのであるが、「現代語訳」では、無難な「速やか」を採っておいた。「鶏頭山」は、早池峰連山の一つで「経埋ムベキ山」三十二山の一つ。「夜をこめて行く歌」の一連は、夜が明けるまでのさまを「三日月」の擬人化によって表そうとしているのであるが、抽出歌は、この中では、割合、客観的描写性が強い一首でもある。

(岩手大学特任教授)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします