2007年 9月 14日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉871 望月善次 星影もいと淡ければ

 〔北上川第二夜〕
  〔ほしかげもいとあはければみをつ
  くし今宵はならぶまぼろしの底〕
 
  〔現代語訳〕星の光も大変淡いので、今宵(こよい)は、澪標(みおつくし)は幻の底に並んでいると思います。

  〔評釈〕「大正八年八月以降」〔「歌稿〔A〕」〕四十六首中の十八首目の「728歌」。「歌稿〔A〕」においては、「北上川第二夜」として位置付けられた作品であったが、「歌稿〔B〕」にいては、この枠組みは取り去られた。「歌稿〔B〕」が抱いた新しい構想によって、枠組みが変わったというより、「歌稿〔B〕」においても、構想が落ちつくところまでは達しなかったというのが評者の見解。「みをつくし(澪標)」を、あかたも、人間のように見立て、その並んだところに注目するさまは、「721歌」の「北上川/そらぞらしくもながれ行くを/みをつくしらは/夢の兵隊。」においても示されたところ。淡い星明りのもと、「まぼろしの底」に並ぶとなると、より賢治らしい表現となっている。

(岩手大学特任教授)

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