〔同 第三夜〕
ものみなはよるの微光と水うたひ
あやしきものをわれ感じ立つ。
〔現代語訳〕「物は皆、夜の微(かす)かな光である」と水は歌い、私は怪しいものを感じて立つのです。
〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の二十首目の「729歌」。「歌稿〔A〕」では、「同 第三夜」に位置付けられていたが、「歌稿〔B〕」では抹消された。また、「歌稿〔A〕」でも同じ形式での二行書きであって、「あやしくものを われ感じ立つ」と結句の前には、一字の空白があり、また「よるの微光」の「よ」は、確認のためか、なぞり書きされている。「あやしきもの」を感じるのは、賢治の特徴の一つで「葛丸」と題された「668歌」にも「ほしぞらは/しづにめぐるを/わがこゝろ/あやしきものにかこまれて立つ。」とあった。夜の静けさの中に、微かな光のもとで、「あやしきもの」に感応して「立つ」(立っている)「われ(わがこゝろ)」がいるのである。
(岩手大学特任教授)
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