2007年 10月 5日 (金) 

       

■  〈潮騒の賢治〜インドネシア紀行〉4 望月善次 八戸の人

 この駅はきりぎしにして

  玻璃の窓海景を盛り

  幾条の遙けき青や

  岬にはあがる白波
 
  モートルの爆音高く

  窓過ぐる黒き船あり

  ひらめきて鴎はとび交ひ

  岩波はまたしてもあがる

          (「八戸」)
 
  文語詩未定稿「八戸」全五連から情景描写の第二連、第四連を意図的に抜き書きした。八戸の自然を賢治がどう見たかを際立たせたかったからである。

  「さやかなる夏の衣して/ひとびとは汽車を待てども/疾みはてしわれはさびしく/琥珀もで客を待つめる」と始まるこの詩が、「歌ひめ」となった人の、四年の後、病を得ての帰郷が主材であることを隠そうとしたのではない。

     
  八戸出身の吉田洋一さんの真珠挿核作業  
 
八戸出身の吉田洋一さんの真珠挿核作業
 
  ところで、「ラブハンバジョ(真珠)養殖場」での驚きの一つは、そこで八戸の人が働いていたことだ。吉田洋一さん。母校八戸水産高校への求人に応じたのがきっかけ。「真珠養殖ってどんななんだろう」という好奇心のままに、同じ会社のオーストラリアに赴任して、真珠貝への「核入れ」の仕事や、地元の人の指導・監督をしている。

  理屈より感情が先走りすることもあるこの地方の人の傾向なども考慮しながら、従業員を使っているという。

  休暇は年に3カ月。これを2回に分けて使うことが多いという。

  八戸が好きなので、八戸のことは四六時中考えているのだという。特に、奥さんや11月に出産予定の子供さんのことを考えているのだという。

  直接お会いしたのは、ちょうど休暇から帰って来られての、バリ空港でのことであった。

  流ちょうなインドネシア語をもって従業員の中に飛び込む姿勢がいいと上司の信頼も厚いが、余計なことは付け加えまい。掲げた写真の真剣なまなざしが吉田洋一という人を何よりも雄弁に語っていると見たからである。

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