2007年 10月 6日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉893 望月善次 北風は少しの雪をもたらして

 北風は
  すこしの雪をもたらして
  あまぐもを追ひ
  うす陽そそげり。
 
  〔現代語訳〕北風は、少しの雪を持って来て、雨雲を追い払って薄日を注いだのです。

  〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の三十八首目の「747歌」。「歌稿〔A〕」の結句の表記は、「そゝげり」であった。なお、「歌稿〔A〕」には「打こむる(数文字判読不能)地も丘もうちくらみ雨雲の(数文字判読不能)居り」の「748歌」があるのだが、判読不能による欠落部分が多いので、評釈歌からは省くことにしたい。抽出歌の内容は、「北風が、少しの雲を持ってきたが、その風は、雨雲を追い払い、薄日が注いだ」というものである。「少しの雪」は、通常の雪が降ってきたというより、風上の降雪地域から風によって飛んでくるいわゆる「風花」を想定すればよいであろう。しかし、全体的な表現は、平板で、「それがどうした」の問い掛けも免れ得ないだろう。
(岩手大学特任教授)

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