2007年 10月 9日 (火) 

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉28 及川彩子 神と約束の日

 街角の蔦(つた)が赤く染まり始めた9月の土曜日。アジアゴの銀座通りにあるサン・ロッコ教会で、親友アンナピアの娘フェデリーカの結婚式がありました。

  秋晴れの朝、花嫁を乗せた車が到着すると、教会の扉が開き、わたしが弾くオルガンの音が、教会に響き渡りました。ワーグナーの結婚行進曲です。

  祭壇の前で待つ新郎ダビデ。整列した親せきや友人が迎える中、父親パオロと腕を組んだ花嫁フェデリーカが緊張した顔で進みます。厳かな結婚ミサの始まりです。

     
   
     
  コンピュータ技師のダビデと彼女は高校の同級生。33歳の2人は、数年前から同居していたので、皆が待ちに待った晴れの日でした。フェデリーカのウエディングベールは、母親アンナピアから譲り受けたもの。アンナピアも終始笑顔でいっぱいでした〔写真〕。

  司祭の先導で、カトリックの信仰宣言、聖書の朗読、指輪の交換とミサは進みます。次いで、わが家の娘ルチアとジュリアが、パンとブドウを祭壇にささげ、儀式に一役買いました。

  イタリアでは、宗教上、離婚はとても困難なので、同居したり、また子供がいても正式に結婚しない夫婦が多いと聞きました。

  「結婚」とは全身全霊をかけた神との約束。信仰そのものと言っても過言ではありません。教会での結婚式というスタイルにあこがれる日本人とは覚悟が違うようです。

  ミサの終曲「アヴェ・マリア」の演奏に送られ、2人が扉を出ると、ひと足先に退場していた参列者からなんとお米のシャワー。道行く人まで祝福して振りかけるのです。豊穣(ほうじょう)を意味するイタリア式紙吹雪でした。

  ミサの後はアンナピア家の庭で披露宴。来賓のあいさつもご祝儀の習慣もなく、友人同士がお金を出し合い、新生活に必要な食器などを贈るのです。白いドレスも気にせず、手料理を振る舞う2人。わたしたちにとって、頼りになるもう一つの家族が誕生したのです。

  (イタリア在住)

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