2007年 10月 11日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉898 鬼グルミ、黄金の赤子ら

 鬼ぐるみ
  黄金のあかごらいまだ來ず
  さゆらぐ梢
  あさひを喰めり。
 
  〔現代語訳〕鬼グルミに、黄金の赤子はいまだやって来ていません(まだ花をつけていません。)。揺れる梢(こずえ)は、朝日の光を食べています。

  〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の四十二首目の「754歌」。「歌稿〔A〕」では、初句を「鬼ぐるみ」から「くるみの木」と修正し、結句は「はめり」と仮名を用いている。クルミの花穂を「黄金のあかご」とすることは、既に「709歌」〔「つつましき/春のくるみの枝々に/黄金のあかごこら/きたりかゝれり」〕でも触れた。比喩(ゆ)的なことを言えば、「黄金のあかご」は結合比喩にして「文脈比喩」〔一首全体を読んで初めて、(ここで述べたように多少の補足が必要ではあるが)「黄金のあかご」が実際の赤子ではなく、クルミの花穂のことであることが判明するからである。〕また、結句「あさひを喰めり」も、同じく「結合比喩」にして「文脈比喩」となっている。

  (岩手大学特任教授)

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