鬼ぐるみ
黄金のあかごを吐かんとて
波立つ枝を
あさひに延ばす。
〔現代語訳〕鬼ぐるみは、黄金のあかごを吐こうとして、その波立つように揺れている枝を、朝日に向かって伸ばしています。
〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の四十三首目の「755歌」。「歌稿〔A〕」では、結句が「のばす」と仮名を用いていた。昨日扱った「754歌」〔「鬼ぐるみ/黄金のあかごらいまだ來ず/さゆらぐ梢/あさひを喰めり。」〕と重なる内容を歌っている。異稿との対比によって、内容が明らかになることは、賢治の詩歌考察に関する基本的留意事項(最も典型的な場合は「文語詩」であろう。脱線覚悟で付け加えれば「何を消しながら作品を仕上げて行くか。」が「文語詩」の主要なテーマの一つではなかったかが、今の評者の問題関心でもある。)の一つだろうが、「あかごらいまだ來ず/波立つ枝/に延ばす」の「754歌」該当部分との対照は、その意味でも外せない。
(岩手大学特任教授) |