〔コホオサイプレスの歌〕
サイプレス
忿りは燃えて
天雲のうづ巻をさへ灼かんとすなり。
〔現代語訳〕サイプレスの怒りは燃えて、天の雲の渦巻きをさえ焼こうとするのです。
〔評釈〕「大正八年八月より」〔「歌稿〔B〕」〕四十五首中の四十四首目の「759歌」。「歌稿〔A〕」では、「コホオサイプレスの歌」の題名のもと四首の一首目で、全て仮名書き。「忿(ふん)」は「心+分(発散する)」から「いちだつ怒り」で、「灼(しゃく)」は、「勺=赤い」による「焼く」。(ただし、賢治が「怒」「焼」等との使い分けにどの程度自覚的だったかは疑問。)「サイプレス」はイトスギ。ここでは、あのV.ゴッホの「糸杉と星の見える道」であるが、「イトスギ」は、キプロス島名やゾロアスター教聖木としても著名。賢治もドイツ語のZypressen を含めて愛用している。サイプレスに一体化して「サイプレスVS忿り(燃え)、灼かん」「天雲VSうづ巻き」と結合比喩(ゆ)に満ちているところが賢治的。
(岩手大学特任教授)
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