2007年 11月 3日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉920 望月善次 いつくしき五色の幡は

  大講堂
  いつくしき五色の幡(ばん)はかた
  けれどみこころいかにとざしたまは
  ん。
 
  〔現代語訳〕荘厳な五つの色の幢幡(どうはん)はしっかりと立っていますけれど、(仏は)この大講堂の中に、その心をどのように閉じ込めていらっしゃるのでしょうか。

  〔評釈〕「大正十四年四月」〔「歌稿〔B〕」〕五十二首の十四首目の「776歌」で「比叡」と題された十二首の二首目であり、「大講堂」八首の冒頭歌でもある。「講堂」は、七堂伽藍(がらん)の一つで、説教や講義をするところ。「いつくし」は「イツ(稜威)クシ(奇)」が原義。神や天皇の霊威・威光が勢い盛んで、鋭く激しい意〔『岩波古語辞典』〕。「幡(ばん)」は「幢幡」のこと。ハタボコのことで鉾(ほこ)の先に旗をつけたもの。……仏や菩薩の威徳を示すシンボルとしての荘厳具。賢治は「幡」としてのみ用いることもある〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。(「幢」も旗の意味で、「幢幡」は同意味を重ねた熟語でもある)まず、「大講堂」のもとに八首もの作品を成したことに注目したい。

(岩手大学特任教授)

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