2007年 11月 6日 (火) 

       

■  〈谷口学長大いに語る〜県立大学が目指すもの〉2 自分は日本人という意識

 ■おしゃべり

  僕の生まれは大阪です。この前、岩手大の平山健一学長が関西の人がほしいと言ってました。岩手の人のイメージだと大阪出身者はおしゃべりというイメージなんでしょうね。僕は元は口べたでした。子供のころは女のきょうだいがしゃべり、おやじがしゃべるので、僕たち男兄弟は出番がなかった。

  いつの間に、おしゃべりになったのかと考えると、やはり国連ですね。最初は国連でも緊張していて、議長の顔を見て「何か日本の意見は」と言われると困ると思って、下を向いていたんです。国連では手を挙げて発言を求めない限り、そういう心配はないんだ、と言われたんですが、最初はやはり控えめだった。語学の問題もあったと思います。

  しかし、国連は現在191カ国か192カ国ありますから、発言しないと存在感は出てこない。

  一般的にアジアの人は控えめなんですが、インドとラテンアメリカはよくしゃべる。特にインド人がしゃべり出すと止まらない。「無理ですよ」と言われましたが、インド人に負けないように頑張りました。

  そうしたら、あるインド人が僕のことを「谷口さんは、おしゃべりだ」と言った、というんだね。褒められたのか、けなされたのか。インド人からおしゃべりと言われるのは、ひどいなという気がしますね。

  日本の大学長がスウェーデンなど海外に呼ばれる機会もあります。東大、京大、早稲田、慶応、そうそうたる顔ぶれが行きますが、学長の先生も外にいったら、あまり発言しない。控えめ。日本ではベラベラしゃべるのはよくないんでしょうね。君子、胸中を語らずということでしょう。

  しかし、グローバル化時代は、それでは駄目です。県立大でも、自分の意見を持ち、それを人前で発言できる人を育てたい。西澤先生がやられた個性と独創性のあるたくましい人材を出したいと思っています。

  ■「日本人だから」

  僕は、あまり進学校は好きじゃないんです。いわゆる秀才。進学校はとにかく勉強して、いい大学に入って、いいところに就職することを目指していますね。

  日本ほど、どこどこの大学を出たということが一つのステータスシンボルになっているところはない。大学に入ることが目的になっている。だから大学で勉強しないなどということも起こりうる。

  大学は自分が何をしたいか、人生で何ができるか、適性を見いだせれば一番、幸福です。合わない仕事をやるほどつらいことはない。

  僕が一番、恵まれていたのは、理想通りのところで働けたということです。若い時から国際機関で働きたいと思っていた。あまり勉強はしなかったけれど、理想を実現するために外務省に入り、外務省でも国際機関をやりたいと、はっきりしていた。偉くなるより、自分の目標はそこだと。

  外務省でも、国際機関でも所属は2、3年で変わりますが、僕はずっと国連関係をやってきた。国連は2回勤務していますし、ほとんどが国際機関勤務です。だから、岩手の人には、いわゆる国際派だと言われるのでしょう。でも、国際機関で働いた人ほど、日本人を意識しています。何を言っても、何を書いても「あの人は日本人だから」と見られる社会です。

  国際機関は、そんな甘っちょろくはないです。アメリカ人であるからこそ得する面もあるし、損をする面もある。日本人であるからこそ得する面もあり、損する面もあるわけです。

  国連事務総長になろうと思ったら、アメリカ人や日本人では駄目なんです。国が大きすぎて。韓国がなれたのは適当な小国だからです。大国の人はなれません。国際機関は平等だと言いながら、国籍がいかに重要か。日本で働いている人より、緒方さんや明石さん、自分も含めて日本人だという意識はものすごく強い。僕はそこから来ているわけです。「国際人」という人種はいません。それなのに、ことさら、谷口さんは国際派だとか言われると、悲しい。そうした印象を与えるのは僕の欠点かも知れませんが。

  ■国際的なノウハウを

  今のグローバリゼーションの中ではソフトウエアでもそうだし、看護でも、社会福祉でも、環境でも国際的なノウハウを持っていなければ、本当の意味の実学実践もできない。旧態依然たる看護でも駄目、社会福祉でも駄目。世界のスタンダードを知らないと本当の意味での地域貢献はできない。地域化と国際化は二律背反ではなく、一体化していないと本当の教育はできないのです。

  間違ってもいいから、とにかく、みんなの前で意見を出していくこと。

  例えば、県庁の就職試験で、県立大の学生は一次試験で通っても、最後のインタビューで気後れしていると言われます。県に入ってくる職員は、いったん社会に出て2、3年経験がある人が割合、多い。中央官庁に勤務して両親の関係で岩手に戻ってきたとか。そういう人たちは、やはり経験を積んでいるわけです。県立大の学生は、もう少し意見を言わないと損です。(つづく)

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  【谷口誠氏】(たにぐち・まこと)一橋大、ケンブリッジ大セント・ジョンズ・カレッジ卒後、59年外務省入省、パプア・ニューギニア大使、国連大使を経て90年OECD事務次長(日本人初代)。97年から東洋英和女学院客員教授、早稲田大アジア太平洋研究センター教授、早稲田大現代中国研究所所長。77歳。

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