2007年 11月 8日 (木) 

       

■  〈谷口学長大いに語る〜県立大学が目指すもの〉4 県内高校との協力が不可欠

 ■創立精神は個性と独創性

  県立大の創立精神は個性と独創性のある人材を育てる、実学実践、地域貢献、この3つが大きな柱です。これは正しいと思います。

  西澤先生の出された路線は素晴らしい。センター試験などで良い成績を取る学生よりも、むしろ個性のある学生を取りたい、丸暗記ばかりしているような学生は将来、伸びないと。

  ただ、10年が経ち、いろいろ課題も出てきました。

  わたしに残された仕事の一つは、ソフトウエア情報学部のレベルを下げないようにすることです。ソフトウエアの世界は日進月歩。大変な競争社会です。優秀な学生を取っていかないと競争に負けてしまう。西澤先生のときは良かったのに、谷口が来て落ちたと言われたんでは非常に悲しい。

  県立大の構想を立ち上げた工藤巌さんは、県内の大学への進学率を上げるために、経済的に恵まれない人も入れる環境を目指していた。しかも岩手大学、岩手医大、盛岡大、富士大などと学部を競合しない形でつくられた。これは非常に立派な教育方針だったと思います。

  ■ソフトウエア情報学部は大学の柱

  県立大には10年前に開学したときの約束があります。文書化されているわけではありませんが、うちの各学部は学部定員の30%を県内出身の学生を取ることにしています。実態は30%どころか65%は県内出身者です。

  入試のシステムは非常に複雑で、まず、AO(アドミッション・オフィス入試)ですね、そして推薦入試、さらにセンター試験を受けて入学してくる。

  看護、社会福祉、総合政策学部は推薦入試に関して県内高校に一定の平均点以上のものとする条件を課していますが、ソフトウエア情報学部は課していません。

  AO入試では優秀な学生が来ます。しかし、ソフトウエア情報学部の推薦入試では過去10年の間に、次第にただ送り込めばいいというような傾向も見受けられるようになりました。ソフトウエア情報学部は160人の定員ですが、その中の30%を県内から取るとなると48人です。

  ソフトウエアは数学、理科、英語もできなければついていけない。1年生から1日10時間近く教授、准教授、助教といった数人の先生が12、3名の学生の面倒をみて相撲部屋方式で鍛えています。途中からついていけない、目標と違ったとなると、その学生にとっても不幸です。

  うちの屋台骨とも言えるソフトウエア情報学部のレベルが下がると、ベンチャーの育成どころか、入って来た学生にとってもかわいそうなことになります。推薦入試のあり方については、県出身者の定員の問題もあり非常に苦労しています。

  残念なことに盛岡一高、三高といった県内の進学校は、あまり県立大に生徒を送ってくれない。なぜ、もっとソフトウエア情報学部などに出してくれないのか。この話をすると「いくらソフトウエア情報学部が良くても、県立大の卒業というのではメリットが少ない」と言われました。

  これは悲しい。われわれは一生懸命やっているのだけれど、県も県内の学校もそういった認識です。これはわれわれの責任でもあり(ソフトウエア情報学部の研究内容や成果を分かりやすく説明してこなかった)反省もあります。

  ■県立高校の二分化にも問題

  県立高校は二分化しています。進学校は県立大、岩手大には注目しない。外に出しています。東大に行ったり、東工大に行ったりしなくても、それこそ岩手のために骨をうずめてやりたいという学生があれば、県立大の門戸をぜひたたいてもらいたいですね。

  元気がある学生に来てもらえれば、うちで徹底的に鍛えます、ということをわれわれも進学校に対してもっと訴えなければいけない。校長先生だけでなく、指導している先生に対して、うちの大学はこういう学生が欲しいんだと。年に1回のオープンカレッジだけではなく、もっと足しげく高校に通わなければいけないと思います。

  工藤さんが言われたように県のための大学なんです。30%の枠どころかもっと県出身者を取りたい。その代わり、進学校でも優秀な学生を出してほしいのです。県立大だから、どんな学生でも県出身者を取ってほしいと言われても、教育者として「はいそうですか」とは言えません。

  岩手大学も同じような問題を抱えていると思いますが、いかにして高校と密着するか。高校と大学が本当に協力していかなければ岩手の教育のレベルアップにはつながってこない。
(つづく)

  ◇   ◇

  【谷口誠氏】(たにぐち・まこと)一橋大、ケンブリッジ大セント・ジョンズ・カレッジ卒後、59年外務省入省、パプア・ニューギニア大使、国連大使を経て90年OECD事務次長(日本人初代)。97年から東洋英和女学院客員教授、早稲田大アジア太平洋研究センター教授、早稲田大現代中国研究所所長。77歳。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします