2007年 11月 8日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉925 湖の光はるかに 望月善次

 みづうみのひかりはるかにすなつち
  を掻きたまひけんその日遠しも。
 
  〔現代語訳〕(見下ろす琵琶湖の)湖の光を遠くに、砂や土をお掻(か)きになった、その日は遠い遠い日のことですねぇ。

  〔評釈〕「大正十四年四月」〔「歌稿〔B〕〕五十二首の十九首目の「781歌」で「比叡」と題された十二首の七首目であり、「大講堂」八首の六首目でもある。第三句の「すなつち」は、当初「すなつき」と書かれたものからの推敲(すいこう)。抽出歌の中には明示されていないが、前に置かれた「780」等から、「掻きたまひけん」の主体は、伝教大師(最澄)だとしてよいであろう。最澄が得度後比叡山に隠棲(いんせい)したのは良く知られている故事。また、比叡山からは、京都市街や琵琶湖は一望できる。「すなつちを掻き」が意味する具体を特定することができずにいるが、一応は伝教大師の苦悩・格闘の日々の象徴的行為だと読んだ。なお、賢治父子は、大津・琵琶湖経由で比叡山に登って、京都側に下っている。

(岩手大学特任教授)

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