2007年 11月 10日 (土) 

       

■ 〈谷口学長大いに語る〜県立大学が目指すもの〉5 語学教育の重要性認識を

 ■岩手の教育レベルのアップを

  信じたくありませんが、岩手はセンター試験の成績平均スコアが全国で最下位。英語のTOEICの平均スコアも最下位だと言われています。新渡戸稲造を出し、宮沢賢治を出した県がなぜそうなのか。大学だけではなく小・中学校、高校の教育から考え直してこないといけない。

  それにはやはりお金もかかるんです。教育ほどお金がかかるものはない。でも長期的に見るとどれだけ岩手のためになるか。一人でも二人でも素晴らしい人材を出せば、何億というお金には変えられない価値を生みます。

  お金の問題だけで「お荷物」というのなら、大学はつぶしてしまってもいい。

  しかし、つぶしてしまったら、どうなりますか。岩手のレベルはもっと落ちてしまいます。いかにして岩手の発展のために国際的にも恥ずかしくない人材を生み出すか。その可能性があるから頑張っています。おそらく、うちの大学の10年後を見たら、誰も「お荷物」なんてことは言わなくなることを確信しています。達増知事は若くて国際的経験もあり、優秀な方ですから大いに期待しています。

  ■盛岡短期大学部を4年制に

  大学の先生が抱えている問題もあります。西澤先生は良い先生を集めるために努力された。給料も研究費もほかの大学に比べて潤沢でした。結果的に甘やかされていたところもある。甘やかされた人間には競争精神が育たない。もはや何もしなくても終身雇用で月給がもらえるという社会ではないのですから、これを変えていかなければいけない。どの分野でもいいから研究で成果を出す、地域に貢献する。大学の中で自己評価にも取り組みます。古い体質を変えようという意欲がなければ駄目です。

  盛岡短期大学部を4年制化しようとする検討も進めています。短大は全国的にも数が減っていますし、就職率も低い。経済的な理由で短大にしか進学できない学生への配慮など過渡期の配慮はもちろん必要ですが、先を見れば考えていかなければならないと思います。

  盛岡短期大学部には2つの学科があります。国際文化学科、生活科学科。僕も短大部の講義に行きますが、なかなか優秀な学生がいます。英語のレベルからいえば、短期大学部のほうが、うちの4大生よりいいぐらい。というのもネーティブの先生がいて実践的な英語で鍛えているからです。

  ■語学教育の重要性

  英語は岩手大も、東北大も実践的なものに切り替えています。県立大は各学部に散らばっていた語学の先生を集め、2006年度より「共通教育センター」を立ち上げました。短期大学部が一緒になれば「共通教育センター」もおそらく強化できる。生活科学科は栄養士を養成していますが、4年制にすれば管理栄養士の養成が可能になります。

  今一番、やりたいと考えているのは「共通教育センター」でのアジア研究と語学教育の強化です。語学教育では日本語にも力を入れ、県立大の特徴として宮沢賢治の研究に力を入れたい。在学中には少なくとも宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を暗記してほしいと考えています。

  日本の教育のレベルが落ちているのは日本語の読解力が落ちていることにも関係していると思います。読解力が落ちると数学も理科も科学も、問題処理能力も落ちるというのがOECDの分析です。

  ■日本語をよく理解すること

  学力の高さに定評があるフィンランドでは「カラワレ」というフィンランドの古典を小・中学校のうちから暗記させる。フィンランド語は特殊な言語ですが、外国語も数学も強い、科学もレベルが高いというのは、読解力が母国語から出てきているからです。

  やはり英語を始める前に国語。数学、科学も英語で考えるのではなく日本語で考えますね。日本人は日本語で教わっているわけですから。まず、日本語をよく理解していないと問題の解決はできない。僕も外国で勉強したわけですが、英語よりも日本語で考えたほうが良い解決ができた。

  まず日本語、そして実践的な英語。第二外国語は選択制にしてむしろ韓国語、中国語といった言語を重視したい。アジアの問題、アジアの文化、歴史をしっかり習得させる。わたしはいろいろな場で「東アジア共同体」の必要性を主張していますが、県立大においてもアジア研究をしっかりやっていきたいと考えている。先日、中国の大連交通大学、韓国の又松大学からの留学生、特別聴講生の入学式がありました。海外の大学との交流も図っていきます。

  ■来年は創立10周年

  県立大にとって10周年となる来年は非常に重要な年です。大学が発展するかどうかは、10周年のあと、新しい10年に向かってどう進むかにかかっています。県立大の10周年は、県とも協力し、地域に貢献する大学として目に見える形でやりたい。達増知事にも、中国や韓国の提携校の学長にも出席してもらい、国際シンポジウムを企画したい。

  僕は、この仕事が大好きです。これまで岩手と深い関係があったわけではないのですが、こんな素晴らしいキャンパスを持っている大学はないです。この大学をもっとよくしたい。早稲田、東洋英和、ICUで教えていたときの学生と比べてみても、うちの学生のレベルは決して低くない。中には磨けば素晴らしく発展する素質を持った学生もいます。自信をもっていい。教えていて楽しい。

  来年は10周年の多くの行事もあり、また大学基準協会による認証評価を受ける年ですが、全力を挙げて乗り越えたいと頑張っています。県民の皆様の温かいご支援をお願いいたします。

(終わり)

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  【谷口誠氏】(たにぐち・まこと)一橋大、ケンブリッジ大セント・ジョンズ・カレッジ卒後、59年外務省入省、パプア・ニューギニア大使、国連大使を経て90年OECD事務次長(日本人初代)。97年から東洋英和女学院客員教授、早稲田大アジア太平洋研究センター教授、早稲田大現代中国研究所所長。77歳。


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